環境配慮型製品開発を行っている企業に対して、昨年度と引き続き聞き取り調査を実施した。一般に、環境配慮型設計は製品コストの増大につながり収益性を圧迫する可能性があると指摘されているが、いわゆる「環境先進企業」では、企業パフォーマンスと環境パフォーマンスとを両立させる様々な仕組みや考え方を適用することにより、両者をトレードオフ関係と見るのではなく、環境パフォーマンスの向上を通じて、企業派フォーマンスを高めようとしている。もっとも、この2つのパフォーマンスの間には、容易に把握できる因果関係を見いだすことは困難である。現在、バランス・スコアカードの視点、すなわち、財務指標と非財務指標との関係分析にヒントを得て、2つのパフォーマンス間の関係を明らかにできる質問票を作成しており、完成次第、大規模標本調査の実施を行う予定である。なお、この観点からの研究成果の一部は、『ケースブック コストマネジメント』に収録している。 シュレッダーダスト問題に関するプロフィットマネジメントについての研究は、いったん完成したが、さらに業界動向や新たな処理技術の出現等も考察の範囲に加えて全面的に改訂作業に入っている。 環境報告書において、どの程度環境配慮型製品開発についての記述があるか、環境報告書の作成をアウトソーシングしているか否か、環境パフォーマンスと企業パフォーマンス間のトレードオフについての記述があるかどうか、環境データが金額表示されているか否かなど多様な切り口から分析を行うことで、企業の環境問題への取り組み、とりわけ、環境配慮型製品開発の進展度が分析できる。現在、分析枠組みがほぼ完成したので、2002年度に刊行される環境報告書を対象にして、分析を実施する予定である。 これらの研究を行う上では、環境問題というセンシティブな問題を取り扱うということから、研究の遂行にあたって多くの困難が予想される。そのため、研究方法論に関しても、十分な配慮が必要となる。この店についてはすでに「管理会計研究の指針」で成果の一部を公表した。今後、さらに研究方法論についても研究を継続し、上記の3つの研究をすぐれた研究方法論に基づいて実施する。
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