米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド及びわが国の公的部門における貸借対照表の機能と位置づけを総合的に分析した。その結果、明らかになった事項及び将来の研究課題は以下のとおりである。 1.米国とわが国を除く3ヶ国は、発生主義による会計と予算及び業績管理を一体化して政府経営をNPM的に行おうとしている。その意味で、貸借対照表の位置づけは明確であり、比較可能なコスト算定に資する上で資本費用を純資産(正味資産)から算定すること及び純資産を財政規律や期間公平性の尺度として利用しようとする。 2.一方、米国とわが国は、発生主義により貸借対照表等を作成する動きはあるものの、その目的は予算や業績管理と直接統合するというより透明性やアカウンタビリティ向上にある。このため、業績予算や政策評価との連動は既存システムに付加する形態になっている。 3.ガバナンス的には、わが国と米国は会計的には伝統的な国家経営モデルの枠内で外部の利害関係者への情報開示を行う方向、他の3カ国は国家及び各行政機関がコーポレートガバナンスを確立する企業経営モデルへの移行と区分できる。 将来の課題として、わが国や米国を含めて国家モデル及び企業経営モデル以外に住民や企業あるいはNPOとの協働あるいは他の国家や国際機関とのネットワークによる政府の関与が増大しており、記録の網羅性や管理改善のため、ネットワーク活動の会計認識・測定理論を開発する必要性をあげることができる。
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