本年度は4年計画の2年目であり、本研究のテーマである「アジア諸国へのケース・スタディ」による実証研究のため、韓国、タイ王国、マレーシア、インドネシア、シンガポールに進出している日系企業への面接調査と資料収集をほぼ研究計画に従って実施した。 具体的には、韓国の日系企業1社、韓国企業2社、タイの日系企業1社、マレーシアの日系企業2社(うち1社はドイツ企業との合弁)、インドネシアの日系企業1社、シンガポールの日系企業3社に、海外子会社の管理会計の実態と課題について、調査票(内容は予算管理、国際振替価格、業績評価など)にもとづく面接調査と工場見学による実態調査を行った。また韓国では、啓明大学の朴教授を始め会計学スタッフと日韓の管理会計の実態、研究について討議、資料収集を行った。同時に韓国企業や大邸テクノパークを訪問し、討論と資料収集も実施した。 また国内では、わが国多国籍企業の親会社サイドヘも面接調査を行った。そのことにより、わが国企業の親企業サイドからの経営環境の変化と管理会計の国際移転の実態と課題について、その現状と特徴についてもヒアリング調査を行うことが出来た。 以上の調査研究に加えて、国際交流基金の派遣研究員として行った欧州諸国(英国、ドイツ、オランダなど)の日系企業約20社の経営活動と管理会計の調査結果との比較考察により、そのアジア的な特徴を明らかにする調査資料を準備することができた。ただ同時に「アジア的」といっても、それぞれの国により歴史、文化などが必ずしも一様でなく、それが経営環境、管理会計に与えている影響についても慎重に吟味する必要性は、ヨーロッパ以上に大きいことが窺えた。現在収集した調査資料を整理、分析すると共に、グローバル管理会計論、多国籍経営論に関する内外の文献の収集を継続している。また「研究発表」にリストした論文をとりまとめ公表した。
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