本年度は、4年計画の3年目であり、「アジア諸国へのケース・スタディ」による実証研究のため、急速に「世界の工場」としての存在感を高めている中華人民共和国に進出している日系企業への面接調査と資料収集を中心に、研究プロジェクトを実施した。 具体的には、大連、北京、天津、上海、審陽の日系製造企業、北京の地域(中国)統括会社への、海外子会社の経営管理実践と管理会計・原価管理の実態と課題を中心に、面接調査と工場見学をもとに実証研究を行った。同時に中国東北部では、Northeast Normal Univetsistyの企業管理学院のNing-Zhong Shi教授と、日中両国の経済発展と管理会計について討議、資料収集を行った。また審陽の経済特区を訪問し、外資系企業の受け入れ動向と日系企業の進出について、中国の研究者たちとディスカッション並びに資料収集を行なった。 国内では、「中国経済と日系企業の進出」(国際経営学会)に参加し、情報交換と資料収集を行った。11月には九州大学主催の国際研究集会「アジア管理会計フォーラム」に参加し、アジア地域の管理会計の実態と課題について、アジア諸国の研究者と討論及び資料収集を行った。そのことにより、わが国多国籍企業の経営環境の変化と管理会計の国際移転の実態と課題について、アジア全体の視点からその現状と特徴について調査研究を進めている。 以上の調査研究に加えて、日本国内企業への面接調査やこれまでの欧州諸国の日系企業の経営活動と管理会計の調査結果の動向(旧西欧諸国から旧東欧諸国への移転)と比較すると、東アジアでの、東南アジアから中華人民共和国へのシフトという同様の現象が見られ、そのアジア的な特徴を明らかにする調査資料を準備することができた。同時に同じ「アジア的」といっても、これまで調査研究してきた東南アジアと中華人民共和国では、それぞれの国の成り立ち、歴史、文化などの多様性が大きく、それらの要因が、日系企業の経営環境、管理会計に与えている影響についても慎重に吟味する必要性が高く、ヨーロッパ地域以上にその落差は大きいことが窺えた。現在収集した調査資料を整理、分析すると共に、グローバル管理会計論、多国籍経営論に関する内外の文献の収集を継続している。またこれまでの成果を「研究発表」としてとりまとめた。
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