研究概要 |
本研究は、1)グローバル化した日本企業のアジアの現地子会社における管理会計の特徴と課題を、現地適用と現地適応という視点から解明すること、2)在アジア日系子会社における管理会計・原価管理と国際振替価格、業績評価の課題の特徴を、海外子会社サイドから、そのアジア的な特質と背景を、代表的な欧米企業のケースと比較考察すること、3)わが国グローバル企業の普遍性と個別性を認識、整理し、管理会計・原価管理の海外移転の日本的な特徴を究明すると共に、わが国多国籍企業の今後の国際展開の再構築のための実務的なインプリケーションを得ること,4)日本的な管理会計・原価管理の展開の特徴と、そのグローバル性やローカル性について、アカデミック・インプリケーションを得ることを意図していた。 研究の方法としては、個々の調査サイトについてインタビューによる聞き取り調査をおこなった。具体的には、シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、インドネシア、韓国と中華人民共和国の日系企業へのインタビュー調査を実施した。ただ最終年は、中国華南地域への調査を計画していたが、SARS流行のため、シンガポール、ベトナム、マレーシアへの調査研究を行った。 成果については、すでに成果報告書などに一部を纏めている。内容的には、EUや米国のケースとの類似性や特徴をある程度確認できたが、同時に東アジア(北東アジア・東南アジア)という広大な歴史と地理的広がりがあり、また各国の経済発展のレベルや社会的、文化的な多様性の影響が予想以上に大きいという問題に直面した。アジアと一口にいっても、研究者の能力や、時間不足だけでなく、同時にイギリス、ドイツ、オランダなどEU地域、北米地域と比べると、経済の成熟度や文化的多様性(民族、宗教、文化、言語など)が大きく、中国経済の急速な発展もあり、国ごとの特性とその国際分業体制、ネットワーク、棲み分けによる影響がみられた。管理会計・原価管理に関する幾つかのタイプ(理念型)や示唆を得ることが出来たが、同時に実務的・研究面ともに、今後緊急に解決を迫られる課題も残されている。それらについては、今後の研究課題として研究を継続したい。
|