本研究目的の一つは、会計文化相対主義に基づき、各国の会計システムが、IASの対応に迫られている現状を比較分析することにあった。既に、G.Hofstedeの国際経営比較研究では、企業活動のグローバル化は、異なる文化をもった社会を相手にする結果、相互に文化、行動様式、意思決定様式に多大の影響を及ぼすことを明らかにしたが、本研究では、いかなる会計アカルチュレーションが発生するのか、IASの会計目的とはなにか、IASがグローバル・スタンダードになりえる条件とは何かという基本問題を明らかにすることにあった。もう一つの目的は、これまで会計が企業の経済リアリティを忠実に映す写像理論を仮定し、企業実態を浮き彫りにすることを求めた時価主義が強調されてきたが、こうした会計の写像理論に対する疑問を抱き、IASおよび各国の会計制度に関する会計言語分析を展開することにあった。 先ず、平成12年度は、各国の代表的会計研究者や職業会計人に対して、IASの現状と今後のあるべき姿に関する意見を論文形式で求めた。次に、平成13年度は、こうしたIASの動向について、論文投稿に協力していただいた海外研究者の意見を、『企業会計』(2000年5月〜9月「新シリーズ:IASを巡る海外研究者の声」)に連載した。また、IASに関係する国内外の代表的研究者や職業会計人の方々に面談し、意見交換を試みた。その結果、各国の会計制度のIASへの収斂は、単なる会計測定技法や会計政策の変更でなく、その経済運営や経営スタイルの改革にもつながり、会計アカルチュレーションを引き起こすこと、同時に、現代会計がバーチャル・リアリティを可視化する言語的役割を明らかにした。
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