研究概要 |
本年度は,キャッシュ・フロー情報の追加的な情報内容を実証的に分析した.分析対象期間は1999年3月までの25年間で,サンプルは東京証券取引所,大阪証券取引所および名古屋証券取引所に上場している企業のうち分析に必要なデータを具備している23,733社・年である. 本研究では,会計利益の構成項目-キャッシュ・フロー(CFO),短期の発生項目(STAcc),および長期の発生項目(LTAcc)-それぞれ項目の予測能力を調べた上で,3つの構成項目による予測モデル開発した.この系列依存予測モデル(SD)は,ベンチマークとしてのランダム・ウォークモデル(RW)より予測精度が高いという結果が得られた(MSPE[SD]=0.0157,MSPE[RW]=0.0311).この予測モデルで求めた,期待外会計利益(UEBXI),期待外営業運転資本(UWCFO),および期待外営業キャッシュ・フロー(UCFO)はともに価値関連性を有意に有していることが確認された.特に,期待外営業キャッシュ・フローは,期待外会計利益および期待外運転資本を考慮に入れても,追加的な情報内容が認められた(b_3=0.11,t=7.25).また,各会計変数を「穏やかな変化」と「激しい変化」に識別するためのダミー変数を加えた分析においても,同様な結果で,より大きいパラメータ推定値が得られた(b_<31>=0.55,t=5.78,b_<32>=-0.46,t=-4.71).
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