研究概要 |
本年度は,前年度につづき,実証分析するためのデータベースを構築・完成した.データベースは東京証券取引所,大阪証券取引所および名古屋証券取引所に上場している企業の22年間(1978年-1999年)分からなっており,27,307社・年で構成されている. キャッシュフローの情報内容を分析するには,会計利益とアクルアル(accruals)を一緒に分析する必要があるため,本研究ではOhlsonモデルの一般化したバージョン(Ohlson1999)を用いた.分析モデルは,それぞれ4つの方程式からなるアクルアル・システムとキャッシュフロー・システムからなっている. 分析に際して,超過利益の計算には分析期間の業種別平均ROEを用い,年度別および業種別のダミーを追加した上で,見かけ上無関係な回帰(seemingly unrelated regression)で各システムのパラメータを推定した. 分析結果は次の通りである.アクルアル・システムの加重決定係数は0.763で,ω_<11>は0.453(t=109.11),ω_<12>は-0.028(t=-21.14),ω_<22>は0.185(t=37.48)であり,ω_<11>+ω_<12>は0.01%水準で有意であった(F>10308.32).キャッシュフロー・システムの加重決定係数は0.765,ω_<11>は0.429(t=103.92),ω_<12>は0.020(t=16.00),ω_<22>は0.216(t=43.12)であり,ω_<11>十ω_<12>は0.01%水準で有意であった(F>11920.24). 以上の結果から,キャッシュフローとアクルアルは異常利益を予測する上で関連性をもつことが明らかとなった.
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