1 本年度中における研究 本年度の研究では、まず財務データの収集と加工作業を行った。特に倒産する企業の財務傾向を時系列で観察するために、倒産企業のうち倒産前10年間の財務データが入手可能な企業を帝国データバンクのデータベースから抽出した。その後抽出企業の財務データを入手し、さらに、倒産企業だけでなく、同期間に存在した企業の時系列財務データも入手した。なお、入手データは全て非上場企業のデータとした。 入手したデータは、66の財務指標に加工した。ただし、財務データの加工には2期分のデータが必要なため、倒産前10期分のデータを入手したにもかかわらず、加工データは9期分となることが判明した。また単純な時系列分析はほぼ終了したが、連続データの比較分析(判別)を目指しており、同分析は先行研究にも事例がないため現在適応する手法について模索中である。 さらにアジア金融市場の調査のため、シンガポール経営大学院を、ロンドン、シティーにおける金融機関調査のためブライトン大学を訪問した。両国訪問により海外における企業破綻に関するデータと金融市場の対応に関する情報を入手し、専門家からの聞き取り調査を行った。 2 来年度の展望 企業倒産には、経営者の意思決定が大きな鍵となることが明らかとなっている。ただし、本年度の研究により、研究に着手する前に仮説とした倒産企業だけが特異傾向を見せる指標については、単純な分析ではその傾向を分析できないことが判明した。また、2000年3月から新しい会計基準が採用され、それまでの財務データとの比較可能性が薄れることから、来年度はデータを増やさず、現在入手したデータをもとに分析を続けていく必要がある。そこで、来年度は現在加工済みのデータを海外で検討されている手法も含め従来型の統計処理だけでなく人口知能系の分析手法も取り入れた新たな手法による解析を続け、分析結果から企業の倒産軌道を明らかにしていく。
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