1 本年度中における研究 本年度の研究では、昨年度入手し加工した財務データの単変量分析を行った。分析は全期間をとおした分析および1992年〜2000年の時系列分析の両方を行った。なお、分析にあたっては当初予定していた66の財務指標に加え、キャッシュ・フローに関わる指標もオリジナルの手法も用いて算出し指標とした。また一部の指標を削除し、最終的に70の財務指標に対する分析を行った。分析に際しては、近20年間の主要経済指標(株価、為替レート、公定歩合、短期プライムレート)を用いてわが国の経済環境の変化を分析し、その結果を財務指標の時系列による推移と比較することで、経済環境の変化による企業財務への影響度を倒産企業、および非倒産企業別に調査した。さらに倒産企業と非倒産企業を同時に時系列に比較し、経済環境の変化と倒産企業、非倒産企業の財務行動の変化を観察した。その結果、経済環境の変化に敏感な財務指標と経済環境の変化には全く影響を受けない財務指標の存在が明らかとなった。さらには、倒産企業の方が非倒産企業よりも経済環境の変化に影響を受けないことが判明した。これは倒産する企業では、すでに経済環境の変化に反応するほどの体力が残っていないからともいえるが、このことはこれまでにない発見であった。 2 来年度の展望 来年度は本年度得られた知見をもとに、時系列の倒産モデルを構築する。本年度行った大量の単変量分析によって倒産判別に有意な指標は、おおよそ見当をつけることができた。来年度は、従来型の統計処理だけでなく人口知能系の分析手法も取り入れ財務データの解析、倒産判別に有意な指標の最終選択を行う。その上で選択された指標の相関分析など個別スクリーニングを行った上で企業倒産の時系列モデルの構築をめざす。
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