Wirsingの連立不等式というディオファントス不定不等式の解の個数は、通常のそれとまったく異なる様相を呈している。代数曲線における整数点の結果は、種数で整数解の有限性と無限性が分かれるが、Wirsingの連立不等式では、連立不等式の指数部分、つまり代数曲線における種数に相当する部分が同じとなる2つの不等式で、解が有限個の場合と、無限個の場合の両方が存在する。この現象についていくつか証明できることをまとめ、ディオファントス近似不等式の解の有限性をあたえる条件の解明をライデン大学のJ.-H.Evertseと共同で与えた。なぜ同じ指数で整数解が有限個の場合と無限個の場合がでるかという疑問に対する、最終的な答えはまだないので、今後はこれらの状態を詳しく調べて本質的な違いを解明したい。また、楕円曲線の有理点の代数的係数対数一次形式について、係数の高さに関しての最良評価を得たという報告も行った。パリ大学のS.Davidとの共同研究である。種数2以上の代数曲線における整数点について、超楕円曲線型の方程式の場合に調べた結果をT.N.Shoreyと1997年に出版しているが、整数点のみならず、一部の素数を分母に許すS整数への一般化の考察に必要なp進対数一次形式も確立した。同じ手法で超幾何関数の値のディオファントス近似をM.Huttnerとともに得ることも出来たが、それはアーベル多様体でのフォーマルグルーブからアーベル対数関数を新しく定義したことの応用から従う。このp進対数一次形式はabc予想と深く関わるので、互いの関係を良く調べることも行った。p進対数1次形式の楕円曲線での意味ある近似を求める次の研究につながるヒントも得た。
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