1)ある種のK3曲面のモーデル・ヴェイユ格子を考察し、高次元における球のつめこみ密度に関して興味深い結果を得た。(文献1) 問題の楕円K3曲面は、70年代の故猪瀬氏の研究を基に最近鍬田氏により構成されたもので(猪瀬・鍬田の曲面)、ランクが高いモーデル・ヴェイユ群を実現する。我々は対応するモーデル・ヴェイユ格子の性質(最短ノルム、密度など)を調べた。その結果、特に16、17、18次元においてはこれらの格子から得られる球のつめこみ密度は、既知の最密記録にせまるか、場合によってはこれを越える可能性ももつことがわかった。 2)平面4次曲線の不変式論と、E型のワイル群の不変式論の間の密接な関係を確立した。(文献2) 以前有理楕円曲面のモーデル・ヴェイユ格子の研究の一環として、指定された変曲点をもつ平面4次曲線の標準形が自然に得られた。これは変曲点が特殊(あるいは一般)なとき、E6型(あるいはE7型)のモーデル・ヴェイユ格子に対応している。平面4次曲線の各不変式の値を、この標準形で評価することにより、平面4次曲線の不変式環から、E6型(あるいはE7型)のワイル群の不変式環への自然な準同型写像が定義される。我々は、このとき平面4次曲線の判別式の像は、ワイル群の「判別式」に等しい(定数倍を除いて)ことを証明した。 3)モーデル・ヴェイユ格子の理論を用いて、関数体上の楕円曲線の「整数点」の問題を研究し、すべての整数点を極めて効果的に決定する十分条件を得た。(文献3) これはA.Bakerの著名な結果に触発されて考えたもので、彼の還暦記念の論文集に発表される(ケンブリッジ大学出版会)。上の結果は多くの応用をもつ。一例として我々は、射影直線上の楕円曲面で、N個の点のみで特異ファイバーをもつものの分類を試みた。(Nが3以下は既知、N=4のときは、新しい結果を得た。)
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