研究概要 |
1)モーデル・ヴェイユ格子の理論を用いて、(1)関数体上の楕円曲線の整数点を決定するための、十分条件を証明した。一般に整数点の決定は容易ではないが、特異ファイバーへの特殊化写像が単射性をもつ場合について、効果的であることが判明した。その応用として、射影直線上の楕円曲面で、N個の特異ファイパーしかもたないものの分類問題を考察し、Nが小さい場合の既知の結果に対し、純代数的な方法による別証明を得た。(2)ある種のK3曲面から、高次元(特に16,17,18次元)における球の詰め込みで、詰め込み密度が比較的高いものを構成した。(3)平面4次曲線の不変式論と、E7型のワイル群の不変式論の間の密接な関係を確立した。(4)楕円モジュラー曲面を用いて興味深い符号(code)を構成した。これはモーデル・ヴェイユ格子のハイト公式からの帰結であるが、古典的なモジュラー形式論においても、有意義な結果に繋がることと思われる。 II)代数体と代数多様体の算術的性質について,グロス予想,楕円曲線及びホッヂ予想を中心に研究した. グロス予想については,テイトによる精密化を更に一般化した予想を定式化し,それを相対巡回拡大の場合に証明した.この結果を用いてアーベル体の場合のグロス予想の精密化を証明することに成功した. 楕円曲線については,半安定な楕円曲線のセルマー群およびテイト・シャファレヴィッチ群について,カッセルズ・ティトペアリングを中心に考察し,テイト・シャファレヴィッチ群の$3$-partはいくらでも大きくなり得ることを証明した.ホッヂ予想似ついては,フェルマー曲線のヤコビ多様体上のホッヂサイクルについて,その組み合わせ論的な構造を中心に研究した.その結果を用いて,今までに知られていたよりも広い範囲でホッヂ予想が成り立っことを確認することに成功した.
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