研究概要 |
1.研究代表者は平成13年度の研究において,even Maass波形式の空間のSelberg跡公式を精密に計算した.その応用として,群GL(2,Z)に関する素測地線定理を得た.この定理を用いることによって,与えられた判別式Dの不定符号整数係数原始的2元2次形式の類数の和の評価を,基本単数のノルムが1と-1の場合に分離して,Sarnakによって得られたSL(2,Z)の場合の評価を精密化することに成功した. 2.研究代表者は,慶応大学の小山信也氏,中筋麻紀氏と共同でSL(2,R)のcocompactな算術的離散部分群に対してそのSelberg zeta関数を不定符号整数係数原始的2元2次形式の類数などを用いて明示的に表示した.さらにその表示を利用してBrun-Titchmarsh型の素測地線定理を示した.この型の素測地線定理は,SL(2,Z)の場合には,Iwaniecにより知られていた. 3.研究分担者佐藤は,筑波大学の杉山和成氏との共同研究において,概均質ベクトル空間のb-関数が(多項式環上の表現についてある種の重複度1性の成立のしたで)表現の分解に対応する分解をもつことを示した.この結果により,いくつかの概均質ベクトル空間についてはb-関数の計算が著しく簡易化された. 4.研究分担者青木は,Fermat曲線の多様体から構成される虚数乗法をもつあるアーベル多様体の無限の族についてHodge予想が成立することを示した.Hodge予想は,従来は,帰納的方法と呼ばれる手法で示されているが,ここでは中間次元の代数サイクルを具体的に構成することにより示した.
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