研究概要 |
与えられた代数体K上にアーベル拡大がどのように存在するか,という問題は「類体論」によって解決済みであるが,Kのアーベル拡大を具体的に構成する問題は1800年にHilbertの提唱した23の問題のうち第12番めの問題であり,現在でも数論の中心的な課題の一つである.本研究は,「・ガロアの逆問題に体する構成的方法」の立場からこの問題に取り組み,アーベル方程式を構成する一般的メカニズムを得ることを目標とする.まずガロア群が巡回群である場合に焦点を絞って研究を進めた. 1.Kが1の原始n乗根ζ_nを含む場合,K上のn次巡回拡大はKummer拡大によって尽くされる.nが奇数の場合,これまでの研究で,より緩い条件ω_n:=ζ_n+ζ_n^<-1>∈KのもとでK上のn次巡回拡大を尽くす(生成的)巡回方程式の族が得られている.今回の研究では,nが偶数の場合にも2個のパラメータを持つ簡明な(生成的)巡回方程式の族を構成する,という結果を得た. 2.逆に,Q上の巡回方程式として基本的である「ガウス周期」の既約方程式を各次数について計算機を用いて数値的に計算し,その性質を組織的に調べた.すなわち,l=3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13の各々に対してp≡1(mod l)をみたす素数p<3000について,次数lのガウス周期η_jがみたす周期方程式F_l(p;X)を計算機を用いて決定し,その振舞いを徹底的組織的に調べ,その数論的構造を研究した.その結果,l=5,7については,周期方程式F_l(p;X)の係数に著しい規則性を見い出した.これを正確に定式化し,理論化し証明を与えること,および更に一般のlについても同様な研究を進めることが今後の課題である. 3.またQ上のl次巡回拡大の全体の集合の数論的「モジュライの構造」とFermat曲線F_l:X^l+Y^F=Z^lの関係を調べた.
|