研究概要 |
本研究は,「ガロアの逆問題に対する構成的方法」の立から与えられたアーベル群Gに対してこれをガロア群とする方程式を構成することを主要テーマとするもので,アーベル方程式を構成する一般的メカニズムを得ることを目標とする.今年度は昨年度に続いて,ガロア群が巡回群である場合に焦点を絞ってQ上の巡回方程式として基本的である「ガウス周期」の既約方程式の構造を調べた.特に,この問題に対する,海外を含めたこれまでの研究文献を組織的に調べた結果,「ガウス周期」に関する膨大な数の論文があり,そのうち,L.E.Dicksonの1935年の「cyclotomic numbers」に関する研究論文が極めて重要であることが判明した.これを本研究に応用することによって,昨年に比して飛躍的に研究が進展した.現在得られた成果を纏めつつあるが,その一部は日本数学会の春期総合分科会で発表予定である.結果の具体的な記述は以下の通りである: 1.任意の次数lに対してl次のガウス周期ηm(0【less than or equal】m【less than or equal】l-1)の積ηmηm+iは再びηmの整数係数一次結合で表される.この係数がDicksonのcyclotomic numbersで,いくつかの著しい性質をもつが,我々はこれらが満たす関係式のみを保存し,cyclotomic numbersを変数(パラメータ)とみなすことによって,複数のパラメータをもつQ上の巡回方程式の族を構成することが出来た.なお,近年F.Thaine氏が同じ観点から研究を進めており、一個のパラメータをもつ巡回方程式族を得るなど,重要な研究を行っていることも判明した, 2.特にl=3,4,5,6,7に対しては具体的に書き下せる簡明な方程式族を得た.また,得られた族が「生成的」かどうかを調べた結果,l=5に対して否定的な結論が得られた.従って,この族から得られる巡回拡大の特徴付けを与えること,および更に一般のlについても同様な研究を進めることが今後の課題である.
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