研究概要 |
最初の成果として,曲線に沿う位数で定義される付値を用いて定義される福井の不変量について,その計算法と安定性についていくつかの結果を得,「S. Izumi, S. Koike, T.-C. Kuo : Computations and stability of Fukui invariant」として出版した. また研究期間中に執筆した,代表者たちの「吉永悦男,福井敏純,泉脩藏:特異点の数理3:解析関数と特異点」も出版された.代表者担当部分は,まとまった叙述のなかった位数の理論を初めて基礎部分から解説したもので,教材にとどまらず後続の研究を促すものとなると信じる. 先行年度の実績報告で述べたように,渡辺敬一などの研究を見て,またMilmanやPawluckiとの会話を通じて,研究内容をやや解析的方向に修正した.したがって14年度の主要テーマは,ユークリッド空間原点の近傍上の函数fと部分集合Aが与えられたとき,f|Aとfに対する(付値の組で与えられる)位数の関係である.これに関しては補間法を応用する方法を開発し,Spallekの仕事を精密化し,代表者の「写像芽に関する引き戻しの位数の基本定理」を補う結果をまとめた論文「S. Izumi : Flatness of differentiable functions along a subset of a real analytic set」として発表することが出来た.これは微分積分学に隣接するきわめて基本的な問題でありながら,手がつかず残されたものがあることを示すものである. さらにKhovanskiiの来訪を機にBezoutの定理の解析的な拡張である,Noetherian函数の位数に関する零評価の結果を発表した.これは零評価の対象を従来よりはるかに一般化するものである. 以上,付値の組を用いて表される位数に関する題材に関して3方向の新しい研究と,これまでの研究の集大成である単行本の著述,および研究分担者達の密接に関連する論文が主要な成果である.
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