研究課題/領域番号 |
12640061
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 謙一 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (20242810)
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研究分担者 |
金銅 誠之 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助教授 (50186847)
細野 忍 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (60212198)
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キーワード | K3曲面 / 解析的トーション / モジュライ空間 / 保型形式 |
研究概要 |
(1)対合付きK3曲面のRicci平坦計量に関する同変解析的トーションがモジュライ空間上の判別式軌跡を特徴付ける保型形式で表されることが筆者の研究で分かっているが、その証明では、判別式軌跡における同変解析的トーションの特異性を決定することが重要であった。そのために、以前はBorcherdsの保型形式を用いた例の計算を行うことにより特異性が決定されていたのであるが、今年度の研究によりBismutらによるQuillen計量の理論を用いて(例の計算無しに)特異性が決定できることがわかった。結論から言えば、Kronheimer氏による有理二重点の普遍変形族上の相対的リッチ平坦計量とEuclid計量に関する適当な同変Bott-Chern類の退化挙動を計算することにより、同変解析的トーションの特異性が決定できる。 (2)位数3の巡回群が非シンプレクティックに作用するK3曲面のモジュライ空間は複素双曲空間である。対合付きK3曲面の一般化として、今年度はこのようなK3曲面のモジュライ空間上に解析的トーションを用いて、複素構造と群作用に関する不変量を構成した。さらに、それがモジュライ空間のZariski開集合上で保型形式の満たす微分方程式を満たすことを示した。 (3)Abel多様体のモジュライ空間上で、テータ因子の判別式軌跡がAndreotti-Mayer氏によりSchottky問題に関連して導入されている。筆者は以前、テータ因子の解析的トーションがこの軌跡を特徴付ける保型形式で表されることを示したが、その際得られた保型形式の積分表示を用いて、今年度はSchottkyの保型形式のFourier-Jacobi係数から(非超楕円的)種数3曲線の普遍族を3次Siegel上半空間上に構成できることがわかった。このような3変数4次式に値を持つベクトル値Siegel保型形式は既にFrobeniusにより得られているが、Schottkyの保型形式を用いた構成は新しいと思われる。
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