4次元空間内に埋め込まれた曲面を3次元空間に射影すると一般には交わりを持つ曲面が得られる。その交わりの3重点について調べた。3重点についての研究で、向き付け不可能な曲面に対しては最小な3重点の数が決まるものが多く知られている。また3重点の最小数が1個である曲面は存在しないことが知られている。これらは佐藤進氏の研究による。また任意の自然数に対してその数を越えるような最小な3重点をもつ結び目曲面は鎌田氏によって構成された。しかし、よく知られている向き付け可能な曲面に対してでも、最小な3重点の数がいくつなのかはあまりよく知られていない。今回の研究で得られた主な結果は「三葉結び目の2-ツイストスパン結び目曲面について、その最小3重点数は4個であり、三葉結び目の3-ツイストスパン結び目曲面について、その最小3重点数は6個である」ことである。 最初の定理は最近発見されたstate-sum invariantを用いて証明した。示す方法は3重点の数が3個以下ならばstate-sum invariantの値はある特定の値、整数しかとらない事を示した。三葉結び目の2-ツイストスパン結び目曲面のstate-sum invariantは整数でない値をとり、3重点の数が4個以上であることを示した。また佐藤進氏により、実際4個の3重点を持つ形で描けることがわかり、最小な3重点の数が4個あることが分かった。2番目の定理は最初に使ったquandleを取り替えて、S_4と呼ばれるものに限ったとき、state-sum invariantの値を調べた。この不変量が整数でない値をとり得るためには最低3重点が何個必要かどうかを調べる方程式を立てて、その計算を計算機で行うプログラムを作った。その結果、三葉結び目の3-ツイストスパン結び目曲面は最低3重点が6個は必要であることが示せた。 曲面結び目については具体例が結び目に比べ少ない。そこで、4次元空間に埋め込まれた曲面を研究する一つの方法、平面に上のグラフある条件を満たすもの(chartと呼ばれているもの)を使って曲面結び目について調べた。鎌田氏により3-chartは次数が6の頂点がないものにC-move同値であることが示された。4-chartで次数が4の頂点を高々1つしか持たない場合は永瀬氏と広田氏によって同様の結果が得られている。この研究で、4-chartで次数が1のもの頂点が6個のとき次数が6の頂点がないものにC-move同値であることも示した。この条件をもつchartに対応する曲面は球面に対応する。次数が6の頂点は結び目曲面には3重点に対応する。
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