研究概要 |
本研究に関する本年度の主な成果を次の3点にまとめ報告する: (1)共形幾何学の基本方程式をシュワルツ微分の立場から確立した,(2)基本方程式の可積分条件を求めた,(3)基本方程式の解空間上に自然な内積構造が入ることを示した. (1)について,基本方程式は2階の線型偏微分方程式で,独立変数の個数がnのときその階数はn+2である.(局所)計量構造を与えるごとに1つの基本方程式が対応し,それぞれが共形同変に変換し合う.また,2次の係数は共形ラプラシアンを,1次の係数はLevi-Civita接続係数を,0次の係数はscaler曲率を含むものである. (2)について,基本方程式の可積分条件が,方程式のもとにある計量の共形平坦性に関係していることは容易に予想されるところであったが,実際方程式に付随するMarter-Cartan形式の成分を調べることにより,それらがすべて共形Weyl tensorおよびCotton tensor等の微分多項式で表されることが分かった. (3)について,解空間に自然な内積構造が入ることは理論からの当然の要請でもあるが,実際それを明示的な形で表現することができた.更にその内積構造が共形同相写像を逆構成するためにも重要な働きをすることも明らかになった. 2001年8月に行われた第48回日本数学会幾何学シンポジウムにおいてこれらの成果の一部を発表した.
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