研究概要 |
本研究の海外共同研究者の一人であるDavid Fremlinの提出した,「実数値可測基数の存在するような集合論のモデルでSolovayによる標準的なモデルと本質的に異なるものが作れるか」という問題に対する一つの肯定的な解答を与えることができた:Saharon Shelahと渕野は,連続体より真に小さい実数値可測基数で,その濃度でのclub principleの成立するようなものの存在するような集合論のモデルを構成した. この構成法での強制法に用いられた半順序は,測度代数を"ゆがめ"て得られる半順序により,ground modelでの可測基数個のrandom実数を付加するようなものとなっている.一方本研究の研究分担者の一人であるJorg Brendleは,これとは異なるが,類似のアイデアにより,付加するrandom実数の数より小さい基数での弱い形のclub principleを強制する半順序集合を(巨大基数に関する考察を含まないコンテクストで)得ている.これらの手法と,その変形は,更に色々な角度から考察してみる価値がありそうに思われる. 上のShelahと渕野による実数値可測基数に関する研究のcategoryでのdualや,連続写像のBlumberg propertyに類似の性質に関してSolovayのモデルと異なる挙動を示すようなモデルの構成法についての研究は,現在さらに進行中である. また,海外共同研究者のStefan Geschkeと渕野による,weak Freese-Nation propertyのvariationsに関する研究においても幾つかの進展が得られた. random実数を付加する半順序や実可測基数に関連した研究の動機の一つは,P(ω)がweak Freese-Nation propertyを持つことの,測度でのdualとなる原理を発見することであったが,Shelah-渕野やBrendleによる結果は,このための足掛かりとなる可能性を持つものとなっているようにも思われる. 上記の他,研究代表者,研究分担者により,P_κ(λ)の組合せ論,実数の集合論,ブール代数などの分野においても幾つかの新しい研究結果が得られている.
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