研究概要 |
平成12年度は,(i)近似界面の誤差評価と収束性および(ii)並列アルゴリズムの構築と数値実験を目的として実施した.(i)については,2流体問題の数値解析において重要なテーマの一つである界面の数値的な再現と近似界面の収束性等の数学的理論付けについて研究を実施した.我々の数理モデルでは界面は移流方程式の解である擬密度関数のの0レベルセットで定義されるので,界面の収束性等の直接的議論は一般に難しい.そこで本研究では,ヘビサイド作用素H(・)を使って擬密度関数とその有限要素近似解の正値の1次元ボレル測度の差のL^p(Ω)-ノルム評価(ただし,p【greater than or equal】1)を考察した.その結果,界面の急激な変化がなくかつ,擬密度関数の有限要素近似解の収束性の仮定の下で,上記の評価が得られることを明らかにした.次に,上記結果の十分条件の一つである擬密度関数の有限要素近似解の収束性について,"純"移流方程式に対する陰的オイラー有限要素スキームの場合の収束性を示した.以上の結果から,擬密度関数の有限要素近似にk次要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<2k/3p>)であることを示すことができた.これに関連して,研究協力者である茨城大学理学部助教授の藤間昌一氏は,新たにベンチマークテスト問題を提案し,その数値実験を通して上記の結果を数値的に実証した.しかしながら,Navier-Stokes方程式の有限要素スキームと移流方程式の有限要素スキームをカップリングした全体スキームの数学解析等については今後の課題として残った. 一方,(ii)並列アルゴリズムの構築と数値実験については,今年度新たに購入したSMP型並列コンピュータ「VT-alpha6 SW」および並列化プリプロセッサ「DIGITAL KAP for DEC FORTRAN」を用いて自動並列化の性能評価を行い,上記アルゴリズムの並列化の準備を行うにとどまった.
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