研究概要 |
平成14年度は2流体問題に対する有限要素スキームの数理解析として,主としてスキームの質量保存性について考察した.一般に非圧縮,immiscibleの2流体の数理モデルにおいては,非圧縮性条件から各流体の質量は保存されなければならない.しかしながら,これまでの研究で開発してきた我々の有限要素スキームでは,質量保存性を厳密には有していないことが,いくつかの数値実験の結果から明らかとなった. そこで本研究では,2流体問題に対する新たな弱定式化を考察することにより,質量保存性を有する有限要素スキームの開発を行った.界面をオイラー的に捉える本手法においては,一般に界面の決定方程式である移流方程式に対して,高精度近似スキームあるいは高精度上流型スキームを適用し,界面をシャープに捉えることにより質量保存性を実現することが考えられる.しかしながら,本研究では,界面を通過するフラックスの損失が0であればいいことに注目し,対象方程式を移流方程式ではなく,むしろナヴィエ・ストークス方程式として,フラックス汎関数によるラグランジェ未定乗数を用いた混合型の変分定式化を考察した.特に今年度は,この変分定式化の数学的正当性を示すために,定常問題およびその近似問題の解の存在と一意性について証明し,近似問題の誤差評価を得た.非定常問題への応用および,本手法による数値実験については今後の課題である。なお,本研究はフランス国立情報制御研究所(INRIA Rocquencourt)のプロジェクトM3NのメンバーであるJ.-F.Gerbeau博士との共同研究として実施されたもので,今後とも継続して共同研究を展開して行くことになっている.
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