研究概要 |
本研究は数学としてのくりこみ群の可能性という未解決の壮大なテーマの基礎的な課題に位置づけられ,確率モデルの解析手段としてのくりこみ群の手がかりを見いだすことが大きな目的であるが,短期的には高次元ガスケット上の自己回避経路(self-avoiding paths)の漸近的振舞をくりこみ力学系の軌道解析を経由して解析することである.本年度は平成12年度からの4年間の継続研究課題の研究期間の最終年度にあたる. 本年度はこれまでの成果をふまえて,くりこみ群の描像に基づく確率連鎖の解析に関する筆者の研究成果のうちの基礎的な部分を整理して教科書としてまとめることを主要な目標とした.目標とした教科書は順調に完成しつつある.過去の研究の蓄積を含む大部の著作であり,本研究年度には出版には至っていない.極めて重要かつ他に類例のない独創的な内容なのでやむを得ない.ただし,教科書に含まれる以下の具体的内容の整理執筆は本年度のうちに完成した. 1 くりこみ群から定まる一次元確率連鎖の構成と重複対数の法則の拡張.微分方程式が解として関数を定めるようにくりこみ群が確率連鎖およびその大局的性質をを定める数学的解析手段である,という期待のもっとも簡単でしかし自明でない場合についての初めての実現である. 2 高次元ガスケット上の自己回避経路(self-avoiding paths)の漸近的振舞のくりこみ力学系の軌道解析を経由した解析.本研究課題の主題についてのこれまでの知見である. 3 ガスケット上の非等方ランダムウォークの大局的な等方性の回復.通常考察の対象となる規則格子では見ることのできないフラクタル特有の現象の発見に関する解説である.
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