研究概要 |
1.一様等方乱流の大規模並列数値計算を実行し、空間解像度が1024^3,到達レイノルズ数R.=460の定常状態を得た。この乱流場から、さまざまな統計量が計算され理論と比較検討が行われた。まず、乱流の慣性領域と呼ばれる領域の存在が確認されたので、このスケール領域での縦、横および混合の速度差の高次モーメント(構造関数)が計算されそのスケーリング指数が現象論的な理論による値と比較された。縦速度差の構造関数のスケーリング指数は理論と一致するが、横速度差については理論より低い値が観測された。これらは2002年3月末に米国のSanta Feで行われた国際会議、4月UCSDでのセミナーで報告され、多くの反響を得た。また、Santa Feでの会議で、Roma大学のBiferale教授より共同研究の申し入れがあり、7月にポスドクのDaumont博士が当研究室に2週間滞在した。そこでSO(3)による速度構造関数の解析の初期準備が行われた。その後Biferale教授らとやり取りを重ね、2003年2月にようやく結果が得られた。やはり、横のスケーリング指数は縦のそれより小さいことが確認された。この理論的解明はいまだ十分ではない。 2.乱流中における圧力勾配は流体粒子に働くラグランジュ的な意味での加速度にほぼ等しい。この確率密度関数に関連して、最近、非加法統計としてのTsallis統計による解析が行われている。Tsallis統計を乱流研究に応用することについていくつかの研究者から共同研究の申し出があった。Los Alamos研究所顧問のKraichnan博士と2002年夏より共同研究が行われ、現在まで続いている。その内容は、乱流の動力学と乱流の統計を考えると、現段階でのTsallis統計の乱流への応用はあまり期待できないというものである。現在もこの研究は進行中であり、多くの研究者と国際的な議論を重ねており、近く論文も出版の予定である。 3.また、乱流における構造関数とそのスケーリングについて、Navier-Stokes方程式から導かれる関係式を数値計算データにより解析し、圧力項の重要性を指摘した。圧力項の速度差を与えたときの条件付平均値を解析し、その関数形が速度差の2次関数であることを理論的に考察し、同時に数値計算との比較により確かめられた。
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