研究概要 |
本研究の目的はSDP問題に対して情報幾何,Jordan代数の観点から接近することにより,この問題の数理的な性質を明らかにし,その知見をアルゴリズム開発に活かし,さらに理工学における様々な問題にSDPによる最適化を応用し,解決してゆくことであった. 12年度の当初の具体的な目標とそれらの結果及び活動報告を次に述べる. 1.現在我々によって得られている計算手間に関する不等式評価を改良してゆくこと これに関しては,いまのところ決定的な改善は成功していない.統計数理研究所の土谷氏,電気通信大学の村松氏との議論なども参考に引き続き検討中である. 2.数理的な性質の解明 これまでNewton反復計算が必要でないSDP問題として知られていたWolkoviczの例が,曲率が0の場合であることを示した.同様なことをすでに証明していたVanderbeiandYangの例と合わせて,Newton反復を必要としないSDP問題が曲率0という視点で統一的に把握できる. これらの結果は,2000年8月のInternationalMathematicalProgramming(Georgia工科大学,Atlanta)でその一部を発表した. 3.応用 SDPによる最適化を用いて,ある種の行列微分不等式の数値解法を開発した.行列微分不等式はシステム制御理論を中心に広い応用があるが,数学分野でも(例えば微分方程式論など)実際の解を求める上で意義があると思われる.
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