研究概要 |
本研究の目的はSDP問題に対して情報幾何,Jordan代数の観点から接近することにより,この問題の数理的な性質を明らかにし,その知見をアルゴリズム開発に活かし,さらに理工学における様々な問題にSDPによる最適化を応用し,解決してゆくことであった. 1.昨年度,SDPによる最適化を用いてある種の行列微分不等式の数値解法を開発した.これを多次元に拡張し,行列偏微分方程式を解けるようにした. 行列微分不等式はシステム制御理論を中心に広い応用があるが,数学分野でも(例えば微分方程式論など)実際の解を求める上で意義があると思われる. この結果をIEEE Conference on Decision and Control, Orland, Florida 2001で発表した. A.Ohara and Y.Sasaki : On Solvability and Numerical Solutions of Parameter-DependentDifferential Matrix Inequality, Proc. of 40th IEEE Conf. on Decision and Contro1,3593-3594(2001). 2.情報幾何,Jordan代数の研究の一環として次の結果を得た. Jordan代数の二乗の元の集合として定義される対称錐(自己双対かつ等質な凸錐)上の情報幾何構造を考えるとその接続の族(Alpha接続)による測地線たちの中点が一般にべき平均(Power mean)の族となることを示した. これらの結果はGeodesics for Dual Connections and Means on Symmetric Cones(現在preprint)として投稿予定. 情報幾何的な構造と対称錐上の平均のこの対応は最適化の分野でSDP問題におけるスケーリングの取り方に関係がある.
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