研究概要 |
昨年度の研究では、基礎となる測度は退化してもディリクレ形式のエネルギーは退化しないという仮定の下で,拡散過程列の極限過程としてジャンプ過程が出現する状況を,汎関数による確率過程の時刻変更を行うことにより導き出した.この問題を解決すると,次は,エネルギーも退化していく場合に,どのような現象が起こるかという問題に取り組むのは自然である.関連する問題は,過去に多く研究者により取り組まれている.そこでは,エネルギーの退化の仕方に仮定を入れており,一般的な結果は得られていない.昨年度までの研究で分かったことは,1次元の精密な結果を得ることが重要であるということである.そこで,本年度は,1次元の場合に制限して問題に取り組んだ.この問題は,distorted Brownian motionと呼ばれている確率過程の列の収束問題や,Ogura(1989)によって得られたbi-generalized diffusion processの列の収束問題とも関連している.興味あることは,Oguraの結果には含むことが出来なかった状況が今回出現していることである.その為,更に精密な議論が必要となり,関数解析的な手法と組み合わせることにより,次の結果を得た:エネルギー関数のグラフの例が一様収束する場合,そのスペクトルが収束するような確率過程の部分列を取り出すことが出来る.極限過程の標本路はジャンプしたり,停留したりする.それらの挙動は,分割された各小区間上では広義拡散過程の法則に従い,小区間の境界に達するとそこでの境界条件に従って新たな挙動を始める.その境界条件は,エネルギー関数の極限関数から決定される.
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