研究概要 |
本年度は,Ritz有限要素法について,いくつかの研究を行った. まず,単位円から2次元のEuclid空間内のJordan領域への等角写像の有限要素近似について解析を行った.適当な有限要素空間とその中のadmissibleな写像の集合上で,ある汎関数(Dirichlet積分である)を極小にするものを有限要素等角写像と定義した.従来注意されていなかった,領域内の一点の対応が指定された場合について,有限要素等角写像の境界上での同程度連続性を示し,それを使って真の等角写像への収束を示した.多くの数値例を与え,有限要素等角写像の有用性を示した. 次に,有限要素法の代わりに境界要素法を使っても,単位円上で定義されたparametricな極小曲面,等角写像がうまく近似できることを示した.さらに,使っている境界要素法がDirichlet積分を近似する能力があれば(ほとんどすべての場合,近似能力はある),境界要素極小曲面,境界要素等角写像は,真の解に収束することを示した.等角写像の場合は,境界要素法を使い,円の外部領域上の等角写像を近似できることを示した. 極小曲面は,平均曲率が至るところ0となる曲面であるが,平均曲率が至るところ定数になる曲面(しばしばH-surfaceと呼ばれる)の有限要素近似を考えた.この場合,3次元のEuclid空間内に与えられたJordan曲線内に張るH-surfaceは,少なくとも2つあることがわかっているが,今回そのうちの小さい方の解(small solutionと呼ばれる)の有限要素近似を定義し,それの真の解への収束を示した.
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