研究概要 |
本年度(2001年度)では,有限要素法の誤差についての基本的な問題についての研究を行った. 有限要素法に対する誤差解析の際には,通常,問題のデータ(微分方程式の係数関数,外力,考えている領域の境界,境界値,初期値等)の滑らかさ(微分可能性)を必要なだけ仮定する。もし,その滑らかさの仮定を弱めていくと,有限要素解の誤差にどのような影響が出るのだろうか?この問題は,非常に基本的で,しかも実用的な応用の観点からも重要であるが,これまでのところ余り考察されてはいない.しかし例えば,方程式が非常に簡単な場合には,係数関数の滑らかさを全く仮定しない時には,通常の誤差評価が全く成り立たないというBabuska-Osbornの反例が知られている. 今回,愛媛大学山本哲朗教授により最近発見されたGreen行列についての結果を使い,上記のBabuska-Osbornの反例を、もう少し一般的な1次元区間上の境界値問題の場合に拡張した.さらにこの手法を発展させることにより,係数関数が有限個の点で不連続であり,また主要項が正負の値をとることを許すという仮定(ただし,不連続点のあいだではある程度滑らかなことを仮定する)のもとで,通常の誤差評価がほとんどそのまま成り立つという結果を得た.これらの結果は,一見普通のもののように思えるが,全く標準的でない仮定のもとで証明されている,本質的に新しい結果である.これらを通常の関数解析的な手法で証明することは非常に難しいと思われる.
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