(1)認識論理のモデルの一つとして「意識と信念のモデル」を導入して、このモデルにAumannの合意定理を拡張した。また、このモデルとの健全性を持つ形式論理ADを構築し、これが有限モデル性を有することを示した。 (2)プレイヤー間のサイクルを持たないコミニュケーショングラフに沿って個人情報を伝達するコミュニケーション過程に対して、認識モデルを導入し次の成果を得た。第一はある事象の事後確率値の情報交換を行いそれを修正する時、これら修正値は収束し全て同じ値をとる。この結果を次の3つのタイプの認識モデルの場合に示した:「知識の束構造モデル」、「意識と信念のモデル」と「p-信念モデル」。第二に、戦略型ゲームにおけるプレイヤーの合理性と自分が形成する他人の行動に関する予想の2点の情報交換を行い他人の行動予想を修正する。この時、この予想値の組みがゲームの混合ナッシュ均衡に収束する。この結果を以下の2つの認識モデルの場合に示した:「S4知識モデル」と「p-信念モデル」。さらに、イプシロンーナッシュ均衡解を形成するコミュニケーション過程の分析も行った。 (3)効用最大化プレイヤーの意志決定の形式体系とそのモデルからなる論理LMUを導入し、「互いに対称な効用関数を持つ2人のプレイヤーが互いに支配戦略を取る事を信じているならば、この二人の選ぶ戦略は必ず一致する」という合意定理がLMU内で証明可能になることを示した。 (4)「S4知識構造」を持つトレーダー達で構成される「知識に附随した不確実性市場経済」の概念と、そこに「合理的期待均衡」の概念を導入した。さらに、Milgrom and StokeyのNo Trade Theoremの拡張を与えた。 (5)「S5知識構造」を不完備情報展開型ゲームに導入し、次の結果を示した。「最後に意志決定をするときに合理的な選択をプレイヤーが行うことを全てのプレイヤーが知るならば、ゲームの確率信念が逐次均衡解を誘導する。」 (6)戦略型ゲームにおけるベイジアン意思決定理論にプレイヤーの予想の「頑健性」の概念を導入、ゲームのナッシュ均衡解を形成する予想が共有知識になるモデルのクラスによって「頑健な予想のモデル」のクラスを特徴付ける研究を行った。
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