1.Wignerの交換関係にしたがう1次元調和振動子の運動量作用素には、微分の項と原点で特異になる項とが存在する。これを掛け算作用素へと変換するものをN次元の場合で構成した。この変換はFourier変換の1つの一般化になり、微分の項と原点で特異になる項の両方をまとめて変換するという点で優れている。特異な変数係数をもつ偏微分方程式や特異なポテンシャルをもつSchrodinger方程式の初期値問題へこの変換を応用して、その解をexplicitに得た。また、この変換を用いてSobolev型の空間を定義した。Sobolev空間は滑らかさだけについての情報を有するのに対して、この空間は滑らかさのみならず特異性についての情報をも有する。そして、この空間についてのSobolev型の埋め込み定理を証明した。通常のSobolevの埋め込み定理は滑らかさだけについての埋め込みになっているが、このSobolev型の埋め込み定理は滑らかさのみならず特異性についての埋め込みになっている。さらに、この変換を逆2乗ポテンシャルの中を運動する量子力学的粒子の解析へ応用した。Hardyの不等式を用いたものなどと比較して、これは4次元までは条件が最も緩いことが判明した。 2.Dirac formalismによるS^1上の量子力学に登場する力学変数が自己共役作用素になることを証明した。この結果、S^1上の量子力学としてはこれは妥当であることが判明した。また興味深いことには、運動量作用素は実数全体に等しい連続スペクトルのみを持つことがわかり、周期的境界条件のために点スペクトルしかもたないという期待が否定された。この結果をS^1上を運動する自由粒子についてのSchrodinger方程式の初期値問題へ応用した。
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