研究概要 |
昨年度完成した,無限遠に台が含まれる超函数の具体例を任意の準解析的ウルトラ超函数の場合に一般化した研究は,森本光生氏の還暦記念論文集への寄稿論文として本年度出版された.その後は,このような無限遠のみに台を持つ超函数の性質を更に詳しく調べ,その構造を究明して,それらの偏微分方程式への応用をはかる研究を継続している.イタリアのプラッチ氏との共同研究として,代数函数の範囲でのD加群の同値問題の究明を続けており,最終年度までには論文としてまとめられるであろう.またD加群の定める種々の線型部分空間の具体的な計算を通して誤り訂正符号に応用可能な離散的分布のものを見出し,ゴッパ符号の拡張をはかる研究は本年度も継続し,最終年度までには論文として公表できる成果杢得られるであろう.今年度新たに始めた研究としては,イルクーツクのバランディン氏との共同研究として,3次元空間に分布したベクトル場の数少ない方向からの内積投影データに基づいて,元のベクトル場のソレノイダル部分を再構成するという少量データトモグラフィの問題を,ベクトル型球面調和函数展開を用いて解決する再構成理論を始めた.本年度は理論的な部分が一応完成して長野の逆問題国際会議でその概要を発表した.引き続いて数値実験による検証を実行中であり,この結果を合わせて論文として完成させ出版する予定である.超函数の特異スペクトル理論の画像解析への応用として昨年度は基礎研究を行ったが,今年度は引き続いてそのエッジ検出や平面画像における光の方向の特定などのさまざまな応用への研究を継続中である.
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