研究概要 |
今年度は,研究課題に関連して以下の研究を行った. ●昨年からの研究の継続として,滑り境界条件(あるいはそれに共役な境界条件)に対するKorn不等式の研究を深めた.具体的には,(1)区分的にC^2級の境界の滑らかさの仮定をLipschitzクラスまで落とした.(2)Lame定数が,歪みエネルギーの非負性を保証するぎりぎりの値のとき,第2Korn不等式(通常の場合の第2Korn不等式より真に強い)がLipschitz領域で成立することを示し,対応する第1Korn不等式が成り立つための領域の満たすべき条件を調べた.特に(2)については,2次元での領域の正則自己同型群との関係,3次元以上での境界条件なしでの第2Korn不等式の証明法が興味深いと思われる. ●上記の研究との関連で,一般の2階強楕円型システム(弾性体方程式)に対する滑り境界条件下でのエネルギー不等式(Korn型不等式)の最良定数を,楕円型システムのシンボルを用いて計算する手順を与えた. ●以前の研究で,非等方弾性体の理論では有名な「Barnett-Lotheテンソル」に対して微分方程式論的見地による新しい導出法を与えた.これを利用して,圧電体波動方程式の混合問題に対して,関数解析的枠組みで,解の存在と一意性,エネルギー不等式などを導いた.(進行中) ●内部に進展する亀裂を含む弾性波動方程式について,圧電体の場合,層状媒質の場合を含む形で,以前から進めていた研究の拡張を行っている.(進行中)
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