1.正則パラメータを持つマイクロ関数は、その正則パラメータに関して制限をとることができる。正則パラメータへの制限が全てゼロのマイクロ関数・佐藤超関数を与えるときに、もとの正則パラメータ付きのマイクロ関数・佐藤超関数がゼロであるかという自然な問題が生じる。この問題を肯定的に解決した。この結果のおかげで、マイクロ関数で表示される第2マイクロ関数とそうでないものをフーリエ変換で特徴付ける研究が進んだ。 2.正則パラメータを持つマイクロ関数の層を、正則パラメータに関して佐藤の超局所化の操作を行うと、柏原の第2マイクロ関数の層が得られる。このゼロ切断への制限が第2超関数の層となる。対応する正則包合的な多様体へマイクロ関数の層を制限すると第2超関数の層の部分層となる。このギャップをフーリエ逆変換で特徴付ける研究を行った。実際、第2超関数のフーリエ逆変換は正則列と呼ぶ漸近展開列で書けることが示されている。今後は、微分方程式の解の断近展開への応用も期待される。 3.連接D-加群Mに対して、その正則関数に値をとる解層Fを考える。Mが超曲面Yに関してある条件を満たすとき、解層Fのvanishing cycleとnear-by cycleはMの境界値写像の構成に用いることができる。このことは、すでにYves Laurent教授とTeresa Monteiro-Fernandes教授がよく研究している。今年度の研究は、片岡清臣教授との10年前の共同研究である(超局所)双曲型混合問題とこのLaurent教授たちの研究との関連について基礎的な研究を行った。特にLaurentたちが構成したのは局所的な佐藤超関数レベルの境界値写像であるが、マイクロ関数レベルのものも考察を行った。これによって、10年前の共同研究を新たな視点で捉え直して、応用もFuchs型の方程式系などに広がる可能性が出てきた。
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