研究概要 |
1、どんなIII型単射的因子環も,マルコフ測度による可算機変換から構成されることを示した.III型単射的因子環の中にあって,ITPFI因子環は基本的であり,これは独立な測度による可算機変換から構成されることが従来から知られていた.実は二つのクラスの間のギャップが,独立測度より広いマルコフ測度により捉えられることを保証した点で,得られた結果の意義がある.更に,真に隔たりがあることを実証するため,あるマルコフ測度を具体的に構成し,対応する可算機変換が漸近推移的でないことを明らかにし,この課題を解決した.A.Dooley(UNSW,Australia)との共同で行った. 2、エルゴード変換のフォンノイマン環への応用としては,他に,竹崎のIII_0型構造定理に対応したエルゴード理論からのアプローチを行った.アメナブルを仮定しない勝手なIII型の可算エルゴード変換を,II型とトレースをスケールするある可算正規化変換群で表現しようとしたもので,Danilenko(Karkov State Uni.Ukraine)と共著で出版した. 3、von Neumann環の部分因子環の分類に対応して,エルゴード理論の分野でsubrelationの軌道同値分類の枠組みを作った.relationとJones指数有限のsubrelationから,共通のsubrelationがとれ,他にそれへの有限群の作用とある部分群とがとれ,初めに与えたrelationとsubrelationとが,共通のsubrelationを土台に、この作用と部分群の作用のそれぞれのクロス積とで書け,しかも作用の取り方は一意的であることを主張したものである.前半部分はSutherlandにより知られており,一意性の部分がその結果を改良した点である,その意義は大きく.特にアメナブルの場合,これにより,よく知られているDyeの定理もsubrelationがらみで改良され,III型についてもsubrelationの完全分類を可能としている.単著論文として出版した. 4、エントロピー零で,強いエルゴード性(弱混合性)を持つとして知られているChacon変換について,そのnon-singular版を論じた.区間切断・積み重ね法で作られるが,区間を切断するとき切断の比を変えることにより,様ざまなIII型が現れる.そのとき弱混合性がいつ成り立つかを明らかにしたもので,C.Silva(Williams College,USA)と共著で出版した.
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