研究概要 |
III_0型単射的因子環のflowを用いた画期的な分類がConnes-Kriegerによって完成し、その部分クラスでより構造が具体的なものとしてとして注目されるITPFI因子環についてもflowによる把握が可能となった。研究題目に掲げる漸近推移性がそれである。しかし因子環のflowの計算が容易でないことも事実で、特にITPFIでない単射的因子環をflow以外の特性で把握する方法はこれまで知られていなかった。研究の大きな目的はこの部分の解明である。今期得られた結果は次の通りである。 C^*-環と位相軌道同型理論でよく使われるBratteli diagramとそれに付随するVershik変換、さらにnonsingularなMarkov測度を用い、すべてのIII_0型単射的因子環を記述できるようにした。しかもそのMarkov測度は一意エルゴード的であり、軌道同型のみならず力学系としての興味ある性質を兼ね備えている。これについて論文"Nonsingular dynamical systems, Bratteli diagrams and Markov measures" (preprint 32頁)をA. H. Dooley (UNSW, Australia)と共著で書いた。なおこれは学振とオーストラリア科学アカデミーとの覚書による二国間事業として招聘された共著者との共同研究でもある。 昨年度は、同共著者と一緒に、従来flowのレベルでしか捉えられなかったITPFIでない単射的因子環を直接にしかもあるBratteli diagramとMarkov測度で具体的に構成し、"Markov odometer actions not of product type" (19頁)として論文を投稿した。
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