研究分担者 |
廣瀬 宗光 明治大学, 理工学部, 講師 (50287984)
田中 和永 早稲田大学, 理工学部, 教授 (20188288)
大谷 光春 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30119656)
竹内 慎吾 学習院大学, 理学部, 助手 (00333021)
中島 主恵 東京水産大学, 助教授 (10318800)
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研究概要 |
今年度の研究テーマは、次のような準線形拡散項を含む反応拡散方程式系 u_t=Δ[(1+αv+γu)u]+uf(u, v), v_t=Δ[(1+βu+δv)v]+vg(u, v) に対する定常・非定常問題の解析である。このシステムは同一領域で生存競争する2種の生物について、棲み分け現象を記述する数理モデルとしてShigesadaらのグループによって提案されたものである。未知関数u, vは個体数密度を表わし、非線形拡散項は通常の拡散に加え、個体数密度にも拡散が依存することを意味している。反応項f, gはu, v間の相互作用を表し、Lotka-Volterra型の競合モデル、またはprey-predatorモデルを扱う。 (1)Lotka-Volterra型の反応項を伴うShigesadaモデルに対する時間大域解の存在について、従来知られている結果は空間次元が2以下のケースに限られていた。また、空間次元についての制約をはずそうとすると、反応項に関する仮定が必要であった。本研究では、α,γ>0の場合、別の方程式の拡散項が線形(β=δ=0)ならば、空間次元や初期データの大きさと無関係に時間大域解が一意的に存在することを示すことができた。うまくいった理由は、システムを準線形放物型方程式と半線形放物型方程式に分解し、それぞれの方程式についての基本解評価とself-diffusion項をフルに活用したアプリオリ評価を効果的に組み合わせた点にある。この方法はδ>0のときにも適用することができ、空間次元が5以下の場合に大域解の一意的存在を示すことができた。 (2)Shigesadaモデルに対する定常問題について、正値定常解は共存解として大きな意味があり、その個数を知ることは重要な問題である。本研究においては同次Dirichlet境界条件下のprey-predatorモデルについて、複数個の共存解が存在しうるか、を集中的に調べた。その結果、非線形拡散の効果が非常に大きいという特別な状況下では、共存解の作る分岐解の大域的構造についてかなり詳細な結果が得られ、とりわけ共存解が3個以上存在し得ることを示した。
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