研究概要 |
惑星状星雲(PNe)は、(太陽も含まれる)中小質量星の進化上、漸近巨星枝段階で生じた質量放出現象によって形成される。高温中心星と膨張電離ガスに分けられる。近年のハッブル・スペース・テレスコープ(HST)がもたらした詳細な画像は、予想をはるかに超え、複雑なガス流が存在することを明らかにした。本研究課題の目的は、HSTの画像に対応するガス流の速度場を明らかにすること、又一般に星間空間に放出されるガスの形状が中心星の輻射場の下でいかに生成されたかを明らかにすることである。 研究方法は、光学望遠鏡による観測で、空間(画像)情報を保持した高分散分光により、速度情報を解析することである。これにより以下のような結果を得た。 1.分光器の入射スリット位置角を制御する方法で、銀河系ハロー部に属するPN, H4-1の中に、双極流状の特異な流れを見出した。 2.これまでに考えられていた10〜20km/sの膨張速度に加えて、faintではあるが100km/sを超える高速ガス流が多くのPNe中に存在することを見出した。 3.速度分解能が1〜2km/sの精度で、スリット位置角を制御できるエッシェル分光器による観測モードを確立し、IC 2149,NGC 6572等で"位置-速度"関係を明確にできる資料を得た。 結論として、PNeの形成は、漸近巨星枝段階の比較的球対象に近い質量放出が起こった後、次の段階の非球対称高速恒星風が、複雑な様々の形状を作るに至ったと考えられる。 尚、PNeとの関連で、輝線輪郭解析手法を応用するため、共生星Z Andの活動期のスペクトルを得、予備的考察を行なった。高温矮星への物質降着が、質量放出(あるいは恒星風)現象を生み出し、数100km/sから1000km/sに及ぶ広い輪郭、特に翼部の構造を形成していると結論づけられる。
|