宇宙論的銀河・銀河団形成シミュレーションとバイアスの起源

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12640231
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 須藤 靖 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20206569)
• キーワード: 銀河 / 銀河団 / 宇宙論 / バイアス / 数値シミュレーション / 非線形重力

研究概要

本年度は、銀河、銀河団が形成されるもっとも重要な場所である暗黒物質ハローに対して、理論モデルとシミユレーションデータを駆使して、その空間的バイアスを記述するモデルを構築した。今回提唱した経験的なモデルは、数値シミュレーションデータの2点相関関数を10パーセント程度の誤差範囲で再現できる。さらにこのモデルをジーナス統計と呼ばれる、宇宙の密度分布のトポロジカルな性質を記述する統計量に応用し、将来の観測データを用いた検証可能性について議論した。
また、最近この暗黒物質ハローの中心部の密度プロファイルが、理論的にも観測的にも大きな興味をよんでいるが、遠方銀河が手前の銀河団の重力ポテンシャルによる重力レンズ効果のために像が変形されアーク上のイメージを作る確率を用いて中心部の密度分布を検証する方法論を提案した。
一方、暗黒物質の非線形密度場の確率分布関数が、対数正規分布にしたがうことを明らかにし、これを用いて、さまざまな統計量の推定が理論的に可能となることを示した。
観測的なプロジェクトとしては、茨城大学、国立天文台、東北大学のグループと共同提案していた野辺山観測所での銀河団のSZ観測の2年間長期観測計画が採択され、現在、観測を実行中である。最終年度である来年度には、これらのデータも半数は解析が終了することが期待でき、その結果を通じて、上述の暗黒物質ハローの中心部での密度分布、および空間バイアスに対する観測的制限をうる予定である。

研究成果

• [文献書誌] Atsushi Taruya: "Nonlinear Stochastic Biasing of Peaks and Halos: Scale-Dependence, Time-Evolution, and Redshift-Space Distortion from Cosmological N-body Simulations"Publications of the Astronomical Society of Japan. 53. 155-167 (2001)
• [文献書誌] Chiaki Hikage: "Genus Statistics for Galaxy Clusters and Nonlinear Biasing of Dark Matter Halos"The Astrophysical Journal. 556. 641-652 (2001)
• [文献書誌] Toshiyuki Fukushige: "The mean pairwise peculiar velocity in cosmological N-body simulation: time variation, scale dependence and stable condition"The Astrophysical Journal. 557. L11-L14 (2001)
• [文献書誌] Kohji Yoshikawa: "Nonlinear Stochastic Biasing of Galaxies and Dark Halos in Cosmological Hydrodynamic Simulations"The Astrophysical Journal. 558. 520-534 (2001)
• [文献書誌] Masamune Oguri: "Probing Core Structure of Dark Halos with Tangential and Radial Arc Statistics"The Astrophysical Journal. 559. 572-583 (2001)
• [文献書誌] Issha Kayo: "Probability Distribution Function of Cosmological Density Fluctuations from Gaussian Initial Condition: Comparison of One-and Two-point Log-normal Model Predictions with N-body Simulations"The Astrophysical Journal. 561. 22-34 (2001)