z=0から1までの多数の銀河団の解析から、以下のことがわかった。まず、銀河団の単位バリオン質量当たりのBバンド光度はz=0から1までに2-3倍大きくなる。もしこれをBバンド光度の増光として解釈すると、この増光は、銀河団内の楕円銀河の増光の仕方と一致する。次に、上記の増光を銀河種族全体の光度進化モデルと比較したところ、星形成のタイムスケールが非常に短い(0.1Gyr程度。楕円銀河的)モデルおよび星形成のタイムスケールが5Gyr程度の(ディスク銀河的)モデルの予想と一致した。 一方、すばる望遠鏡を用いてz>1の2つの銀河団を観測し、以下の結果を得た。まず、銀河団の明るい銀河の光度関数を調べたところ、近傍の銀河団の光度関数を楕円銀河的に光度進化させた場合の予想と一致した。これは、明るい銀河の光度進化は第ゼロ近似では楕円銀河の進化で記述できることを意味する。しかし、楕円銀河的な銀河ですら、z>1においては、かなりの規摸の星形成活動が見られる。これは、こうした銀河が楕円銀河の進化モデルに厳密には従わないことを意味する。 これらの結果を組み合わせると、銀河団内の銀河の平均的な進化(大局的な星形成史)は第ゼロ近似としては楕円銀河の進化で良く表せるといえる。一方、それと矛盾する観測結果も同時に得られている。また、本研究では銀河団が開放系であること(銀河団は周囲の銀河を取り込みながら成長すること)を考慮していない。これをモデルに採り入れること、および、近赤外などの新しい観測を行なって星形成史に対するより強い制限を与えることが課題である。
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