本年度の研究では、矮新星「や座WZ星」で観測される早期ハンプ現象の新しい解釈を提案したことである。矮新星の光度曲線で、いくつか異なったタイプの「ハンプ」と呼ばれる周期的な明るさの変動現象が知られている。代表的なものとしては、矮新星の静穏時に観察される「軌道ハンプ」と、おおぐま座SU型星の「スーパーハンプ」がある。最近見つかったハンプ現象として、や座WZ型矮新星の爆発の初期(爆発開始から約10日ほど)に、軌道周期で繰り返す「早期ハンプ」と呼ばれる現象がある。2001年7月に爆発した「や座WZ星」では、爆発の立ちあがりから詳しい観測がなされ、振幅が0.5等にも達する「早期ハンプ」が極めて明瞭に観測された。 この「早期ハンプ」現象の解釈として、矮新星の円盤不安定性モデルに基づき、連星の質量比が極端に小さい場合、爆発に伴って降着円盤が2:1のレゾナンス半径にまで膨張し、2:1レゾナンスによる潮汐二本腕アームが出来るためであるという解釈を提案した。実際、連星の質量比qが0.08以下になると、円盤不安定性をきっかけとした爆発により、降着円盤の外縁は2:1レゾナンス半径まで膨張することが示される。矮新星爆発の円盤不安定性に基づく統一モデルとして、私が提案したモデルがある。このモデルでは、連星系における質量輸送率と降着円盤からの角運動量の引き抜きがどのように行われるかが、矮新星を異なったグループに分ける鍵になる。や座WZ型は、質量比がもっとも小さいグループで、降着円盤からの角運動量の抜き取りが、2:1レゾナンスに伴う二本腕の潮汐摩擦によるものであり、観測的には「早期ハンプ」で代表されるグループということになる。以上の研究は、ドイツのマックスプランク天体物理研究所のMeyer氏との共同研究としてなされた。
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