研究課題
基盤研究(C)
本研究期間中の2年間で、太陽観測衛星「ようこう」に搭載された硬X線望遠鏡(HXT)を用いて、フレアを起こしている磁気ループの足元に対応する硬X線源の位置の時間変化を詳しく調べることにより、フレアを引き起こすコロナ中の磁場構造と、その中で進行する粒子加速のようすを探ってきた。特に2000年7月14日に発生した大規模な太陽フレアは、「ようこう」衛星だけでなく、米国のTRACE衛星でも良好な観測データが得られ、解析が重点的に進められた。このフレアでは、これまで「2つ目玉」と考えられてきた非熱的(>30keV)な硬X線源が、Hα線で観測されるのと同様な、磁気中性線の両側に位置する2本の細長い帯(リボン)状を示しているのが発見され、フレアのエネルギー解放・粒子加速には単一のループではなく、大規模な磁気アーケード構造が関わっていることが示唆されている。また、このリボン内の硬X線源の強度分布の時間変化や、エネルギースペクトルの空間分布を調べることで、フレアの進行にともなって、フレアに関与するアーケードの磁気シアーが減少していくこと、リボンの外縁部ほど硬いスペクトルを示すこと、など粒子加速メカニズムを解明する手がかりとなる観測事実が得られており、引き続き詳細な解析が行われている。一方、このフレアの解析を契機として、大規模な磁場構造がどのようにして形成され、磁気エネルギーが蓄積されていくのかに着目した解析および理論的な研究も精力的に進められ、3次元の磁場構造中で進行するエネルギー解放(磁気リコネクション過程)の描像を明らかにする研究が本格化してきている。
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