まず、非剛体地球の物理的効果を取り入れる標準手法である「剛体地球の章動解と非剛体地球の物理的効果の変換関数の畳み込み」を行う変換関数法の精度を高め、かつ数値的な剛体章動解にも対応できるように、独自に導出した対称線形数値積分公式を応用して数値的畳み込み法を創出し、その過程において従来の解析的畳み込み法の欠陥を発見し、標準理論への補正項を計算した(Shirai and Fukushima2000)。 次に物理的効果を具体的にパラメータ化するために、地球内部がマントルと流体核からなるとする、いわゆる2層モデルを採用し、その自転運動の定式化のひとつであるSOS方程式から、2つの地球物理学的拘束条件を満たす変換関数を導き、扁平率、ラブ数、粘弾性率などの地球物理的基本係数と、変換関数のパラメータとの関係式を陽に導いた。この結果については、解析結果と併せて既に学術論文を投稿済みである。 新しい変換関数に基づいた章動モデルを用いて、1979年から2000年に間のVLBIによる最新観測データの予備的解析を実施する過程において、地球の自由コア章動の存在と励起を確認した(Shirai and Fukushima2001)。さらに励起の時期、回数、大きさなどを具体的に推定する手法を編み出し、その手法を用いて観測データから同定された励起時期と巨大地震の発生時期の一致率が高いことから、巨大地震によって自由コア唱導が励起された可能性を指摘した。この結果については、別の学術論文を投稿済みである。
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