惑星歳差について、DE405に代表される最新の数値天体暦から、その永年成分を高精度で抽出するため、ペリオドグラムによる周波数推定技術と、周波数をも未知数とする非線形最小2乗法を組み合わせ、内在周波数の数を0から1つずつ増やす逐次的手法を組み入れることにより、高精度の非線形調和解析法を編み出した(Harada and Fukushima 2003)。これを、DE405から得られる地球・月重心の軸道角運動星ベクトルの方向角2成分について実施し、有意存周期成分をすべて除去することにより、最終抽出物として時間の2次関数の形にまで凝縮することに成功した(Harada and Fukushima 2004)。これは、DE405が表現している現代の最新運動理論から得られた最新の惑星歳差公式(HF2004)である。 次に、日月歳差と測地線歳差の両者をあわせた量(一般歳差と呼ぶ)をVLBI観測データから推定するために、SF2001章動理論を用いて観測量から周期成分を差し引き、さらにHF2004惑星歳差公式の寄与分を考慮して、日月歳差をVLBI観測データから精密に推定することに成功した(Fukushima 2003)。この後、一般相対論的効果である、いわゆる「慣性系の引きずり」に関する理論的計算から、測地線歳差の最新推定値を求め、上記の一般歳差の推定値から差し引いて、最終的に日月歳差の最新推定値を求めた(Fukshima 2003)。なお、副産物として、元期J2000.0における地球の平均形状軸方向と(本来は一致するように設定されたはずの)国際天球座標系のz軸とのズレの量、元期における一般歳差および平均黄道傾角、地球の力学的扁平率の精密な推定値を得ることができた。
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