研究概要 |
1.トップクォークの質量を精度よく決定するには,反応e^+e^-→tt^^-のしきい値付近の断面積の測定が有効である。クォークが単独では分離できないことから,この決定には理論的な誤差が伴う。トップの質量パラメータとして,伝搬関数の極の位置でなく<MS>^^^-質量を用いることによって摂動級数の収束がよくなり誤差が小さくなることを具体的な計算で定量的に示した。 2.重いクォーコニウムのスペクトルを摂動QCDに基づいて高次の摂動計算を行った。従来摂動論が適用できないと思われていたボトムクォークに関してもかなり実験との一致がよいことがわかった。 3.トップクォークの超対称パートナーであるスカラートップは他のスカラークォークに比べて質量が軽くなる可能性が高い。特にスカラートップ゜の質量が200GeV程度以下の場合は,テバトロンや電子・陽電子リニアコライダーにおいて十分大きな生成断面積を持つが,この質量領域ではスカラートップ゜はトップクォーク崩壊できない。この場合の崩壊モードで特に興味深いのは,中性カレントによってチャームクォークとニュートラリーノに崩壊するモードであり,これは超対称性の破れの構造に対する手がかりを与えるものである。スカラートップクォークの崩壊にはそれ以外に通常の荷電カレントによるボトムとチャージノへの崩壊があるが,この両方が混在した場合において,ハドロンコライダーでどのようにすればスカラートップ゜対生成を検出できるかを検討し,バックグラウンド事象を抑制するための方法を考案した。 4.トップやスカラートップクォークのように世代間の混合が起こる場合,混合行列の定義は摂動の高次に行くと自明ではない。このゲージ依存性に関する考察を行い,超対称理論のチャージノなどに対しても具体的な計算を行った。
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