研究概要 |
宇宙線の永年変化の研究は、宇宙線の起源、伝播、加速機構を調べる上で重要であり、我々の太陽系が銀河系の中をどのように動いてきたかを調べる手懸かりを与える。また、宇宙線強度変動は太陽活動および地球磁場の変動が要因と考えられるため、過去の宇宙線強度変動の測定は過去の太陽系、地球環境を調べる上で重要な情報となる。本研究は、地球大気中で宇宙線によって生成される宇宙線生成核種C-14を利用して約1万5千年前の宇宙線強度変動を調べることを目的としている。 1.使用した樹木試料は山形県米沢の地層中のものであり、2000年間で約4mの堆積という極めて堆積速度の大きな特異な地層であるため,約13000年前から15000年前の2000年にわたる堆積地層中の木片を明瞭な8層に分類でき平均250年毎のC-14濃度測定が可能であることが分った。 2.木片の埋没状態による試料のアルファセルロース抽出率を調べた。木状態では25%,炭化状態で約5%であった。 3.山形大学極低レベル液体シンチレーション測定システムによる年代測定より、木片の放射性炭素年代13756±51年(BP)が得られ約13000年以上前の試料であることが確認できた。 4.5層の試料をAMS測定用グラファイト試料として2サンプル毎作成し、各放射性炭素年代を測定した。深さ方向300cmに対して約1500年の変化があった。この中の1層について約1000年以上若い年代が出ておりC-14濃度に大きな変化があったことが推測される。 7.大気、海洋、植物層、土壌を考慮した炭素循環モデルを作成し、秋田杉、室生杉の1960年代年輪中の大気中核実験痕跡データを測定しその時間推移から炭素交換率の見積もりを行った。 8.約2500年前の鳥海神代杉年輪試料22年輪に対して各年輪の濃度測定を0.2%精度で行った。その濃度変動は約3‰でった。 約1万5千年付近のC-14濃度変動を測定することができた。この堆積層を利用した測定により約2000年の間のC-14濃度変動、そして宇宙線強度変動を推測できることが分った。今後測定データを蓄積し地球磁場の影響評価を行い宇宙線強度変動の見積もりを行うことが課題である。
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