本年度は、一般相対論的な連星中性子星を求める計算法に関して、従来の方法につきまとっていた適用限界をなくすことに成功した。 アインシュタイン方程式の解法として、微分方程式の差分化を用いた場合には境界条件をつけることが容易ではないため、無限遠での振舞いを考慮したグリーン関数を用いて積分方程式として扱うという定式化がある。積分方程式を連星の場合に適用すると、連星の公転軸付近で誤差が積み重なりiterationが収束しなくなることがあり、それを回避するためにこれまでは公転軸付近では有限領域からの展開を使っての補外に頼っていた。その方法では、硬い状態方程式を持った強い重力の中性子星連星を求めることが容易ではなかった。そこで本年度はその限界を解消する定式化を模索し、最終的には空間の拡張をすることで、新たな強力な手法を開発した。それは、非線型の楕円型作用素からなる、アインシュタイン方程式において、線型な楕円型作用素の取り出すことでグリーン関数を利用して積分方程式にする際、φの2階微分の項にパラメータを導入し、実空間での「非ラプラシアン」を「拡張した空間」中での「平坦なラプラシアン」に変換することにより、拡張された空間でのラプラシアンのグリーン関数を用いる。その積分方程式を元の空間へ変数変換で戻してやると、数値的にはiterationの発散を伴わない計算法になっているこの手法では、公転軸付近での扱いに補外を用いる必要がない。この新たに開発した計算法では、従来の手法では容易に求められなかった硬い状態方程式(ポリトロープでN=0.5くらいのもの)に対しても強い重力の連星を求めることができた。
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