本研究では、一般相対論を使って連星中性子星の構造をできるだけ厳密に解く数値計算法を開発し、それを使って連星中性子星の進化を調べ、連星中性子星の合体過程を調べる際の初期条件を与えることを目的とした。 一般相対論的に連星中性子星の準定常状態を求める数値計算法は、定常アインシュタイン方程式をどのように解くかに確立した手法がないため様々な工夫が必要となる。本研究では、球座標を使用した際の原点と公転軸付近での振舞いが、計算のiterationに大きく影響することを解消するために、次のような2つの新しい定式化を開発した。(1)第一には、座標原点を「重心」からずらし、物質とメトリックの赤道面対称性を利用することで、座標特異性が現れないような計算法を生みだした。(2)第二には、非線型の楕円型作用素からなるアインシュタイン方程式において、線型な楕円型作用素の取り出すことでグリーン関数を利用して積分方程式にする際、φの2階微分の項にパラメータを導入し、実空間での「非ラプラシアン」を拡張した「空間」での「平坦なラプラシアン」とすることで、拡張された空間でのラプラシアンのグリーン関数を用いる。その積分方程式をもとの空間へ変数変換すると、数値的にはiterationの発散を伴わない計算法になっている。 この新たに開発した計算法では、従来の手法では容易に求められなかった硬い状態方程式(ポリトロープで=0.5くらいのもの)に対しても強い重力の連星を求めることができる。この計算法を使って、バリオン数一定の連星中性子星の進化の系列を求め、連星が接近したときに不安定化するかどうかの状態方程式依存性を調べた。そのとき、現実的な状態方程式では、不安定化するが、柔らかいポリトロープでは不安定化する以前に連星が接触したり物質の流失が起こることが分かった。
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