研究概要 |
RHIC-SPINにおけるスピン観測量に対する断面積の量子色力学に基づいた導出と評価をおこなった。特に、偏極陽子と無偏極陽子の衝突において終状態に大横運動量をもったπ中間子のみを観測する(P+P^↑→π+X)シングルスピンアシンメトリーA_Nと無偏極核子同士の衝突から偏極Aハイペロンが生成される(P+P→Λ^↑+X)際の偏極P_Λの研究を継続した。いずれもパートン描像では記述できないハドロン中のクォーク・グルーオン相関を反映する「ツイスト3」観測量として注目されている。QCDに基づいた解析をするとA_Nに対しては(i)入射偏極陽子からツイスト3分布関数が寄与するもの、(ii)標的の無偏極陽子からツイスト3分布関数が寄与するもの、(iii)生成されるパイオンからツイスト3破砕関数が寄与するものの3種の寄与があり、P_Λに対しては(a)入射無偏極核子の一方からツイスト3分布関数が寄与するもの、(b)Λからツイスト3破砕関数が寄与するものの2種の寄与がある。これらすべてに対し断面積の導出とモデルに基づいた評価を行なった。更に、この手法をセミ・インクルーシヴ深非弾性散乱におけるパイオン生成e+p^↑→π+XとΛの偏極e+p→Λ^↑+Xにも応用した。 次に、レプトン-核子衝突において、終状態にレプトンとともに大きな横運動量をもったハドロンを捕獲するセミ・インクルーシヴ深非弾性散乱におけるダブル・スピン・アシンメトリーの研究に拡張した。考察したのはツイスト2の過程で、(i)e+p^^→→e'+Λ^^→+X,(ii)e+P^↑→e'+Λ^↑+X,(iii)e^^→+p^^→→e'+π+X,(iv)e^^→+P→e'+Λ^^→+Xの4とおりあるが、これらすべてについて断面積を導出し、既存のパートン分布・破砕関数をもとに評価して特徴を議論した。 クォークのツイスト3分布関数の完全系9T(x),h_L(x),e(x)の一次のモーメント∫^1_<-1>dxf(x)(f=gT,h_L,e)に関する和則について考察した。特に、クォークを標的とした分布関数への摂動論的1ループ補正を調べたが、h_Lとeには、x=0にδ(x)関数が現れるため、一次のモーメントにこれまで成立すると予想されていた和則がやぶれていることを示した。gTについてはそのようなδ(x)関数の寄与は1ループの範囲内ではなかった。
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